今日は、12月8日。
何の日か、と問われてもすぐに答えられない方も多いかもしれません。
今日は、日本が戦争を始めた日。太平洋戦争の開戦日です。
戦争を生きていない私たちにとって、その時代を想像するのに、その時代を生きてきた人の声を聞くことはとても役にたちます。
今日は難しい本を普段読まない方にもおすすめの、詩の形をとった2冊をご紹介。
『落ちこぼれ』 茨木のりこ詩集 水内喜久雄 選・著 理論社 ¥1,470 |
私がとても憧れている方なので、店にも何冊か本を置いている、詩人茨木のりこさん。
はたちで敗戦を迎えたという茨木さんの、『わたしが一番きれいだったとき』という詩があります。
わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした
わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった
(続く)・・・
私たちの今と大きくかけ離れているけれど、だからこそ、もし今の自分がそこにいたら、と想像することが、大きな力を踏みとどめる力になると思います。
茨木さんのまっすぐな言葉は、その時代に思いを馳せるきっかけになるかもしれません。
この『落ちこぼれ』の最後「茨木さんを訪ねて」という選者の水内さんが書かれた文章があります。その文章も、ぜひ一読してほしいのです。
特に若い人に、ぜひおすすめします。
『花森安治 灯をともす言葉』 河出書房新社 ¥1,365 |
「暮しの手帖」初代名物編集長、花森安治。
”鋭い言論と徹底した美意識に基づく誌面づくりで権力に切り込み、生活者に寄り添った”、今の時代にはいないと言ってもよい編集長。その言葉を、テーマ別に編纂した本です。
「美について」「この国について」「私たちの暮しについて」・・・どの章の言葉も直球で届いてきます。そして、この本は「戦争について」で締めくくられています。
戦争のことを、遠い出来事でなくて、生きた言葉として染み込ませなくてはいけない、花森さんの言葉を読むと、本当にそう思います。
地球の上の、すべての国、
すべての民族、
すべての人間が
一人残らず亡びてしまうまで、
ついに武器を捨てることができないなんて。
ぼくたち、この人間とは、
そんなにまで愚かなものだとはおもえない。
ぼくは、人間を信じている。
ぼくは、人間に絶望しない。
大きな力におもねらず、信念を貫いた人の言葉を読んでいると、私も勇気が湧いてきます。
店をやっていると、「ずいぶんと店の雰囲気とは相容れない本が置いてあるのですね」と言われることがあります。
でも、私の中では、つながっているのです。
目を喜ばせたら、頭も喜ばせる。
花森安治のポリシーのように、楽しく美しいものには暮らしがつながっていて、そこには思索がつながっている。
私は、そのバランスを取りたいと思って、一人でもよいから(特に若い人が)手にとってくれたらいいなと思い、ヤングアダルトの小説や哲学書、それから戦争に関するものなど重めのテーマの選書もしています。
なかなか手にとってもらえることが少ないのですが、本屋のはしくれとして置くべき本を売れなくてもずっと置いていくつもりです。
今日は、芯のつよい二人の著作を紹介して、私も普段に増して(?)熱くなっております。今読んでも、本当に新鮮な二人の言葉、多くの方に味わってほしいと思います。
終わりの日も大切です。でも、戦争があったのは始めの日があったから。また始まりの日が来ないように、今日のこの日に思いを馳せてほしいのです。
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